Drタカハシについて

高橋医師の逮捕と起訴

Drタカハシ代表の高橋知之医師、及びその関連会社の従業員計8人が2012年5月22日、医師法違反(無資格医業)の容疑で大阪府警に逮捕された。
TOPページにあるように、エステ業界にとっては衝撃的といっていいニュ-スだった。
業界紙・ステティックジャーナルによると、それ以前、3月に大阪府警より任意の事情聴取を受けていたらしい。
その事情聴取が行われた時に、大阪府警に申述書なる書類を提出したとも書かれていた。
提出した申述書には、”Drタカハシで行っている光脱毛は医師法違反にあたらない理由と根拠” が記述されていたようだ。
当時の高橋医師の言い分は「自分が構築した脱毛理論とそのマニュアルは、脱毛サービスの混沌とした現状を正しくするためだ。利益を度外視して全部を自分一人で築き上げた。断じて医師法には違反していない。」というようなものであり、高橋代表は当然のことながら無罪を主張し、司法の場でその主張が全面的に認められるために徹底抗戦する覚悟であるとし、弁護士10人体制で弁護団を組織したとのことだった。
私も、高橋先生は最高裁まで戦うと言っている、という業界内の噂は耳にしていた。

本来なら裁判を傍聴したいところだが、管轄が大阪ということもあって、マスコミの続報を待っていた。
ネットのニュースで知った第1回公判の続報は、高橋代表と親戚の高橋貴志医師が容疑を認めたというものだった。
私は落胆と同時に、当然の行動だなという感想をもった。

検察・警察は従業員には温情的に対応。

ドクタカ事件(このように呼ばれてもいるので、今後はこの呼び方にする)は8人が逮捕されたのだが、そのうちの3人は女性スタッフで、警察署で事情聴取を受けた翌日には釈放されている。
残る5人のうち、医師は高橋知之氏と親戚の高橋貴志氏の2人で、後の3人はDrタカハシの役員と関連会社(高橋医師が開発した脱毛機・Pナインの販売会社)の役員。
この5人は5月24日に大阪地検に送検さている。
6月12日、高橋知之氏と親戚の高橋貴志氏は医師法違反の容疑で起訴されたが、他の3人は不起訴となった。
この経緯を見る限り、検察はこの事件では医師である2人に全責任を負わせている。

実際、3人の女性スタッフが翌日釈放されたと知った時は、他人事ながら胸をなでおろした。
この3人が20日間も拘置されるのは、あまりに理不尽に思えるからだ。
経営者であり医師でもある高橋代表が、Pナインで施術をしても医師法違反にはあたないと公言していたのだから、従業員はそれを信じて勤務していたはずだ。
ただ、過去の脱毛エステ・医師法違反のケースでは従業員も拘留・起訴されていたわけで、知らなかったや雇い主が大丈夫と言ったから・・・では済まないのが法律の世界だ。
そういう意味では今回警察・検察は、従業員に対しては温情的な処理をしてくれたと言える。

厚生労働省の通達に対する解釈の違い。

別の項で更に詳しく書くが、エステの脱毛に対する行政の見解として厚労省より通達が出されている。
今までの脱毛エステ・医師法違反事件はこの通達が根拠になっているのだ。
一部を引用・要約すると、「 用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為には医師免許が必要である」となる。
これに対する高橋医師の主張は「毛乳頭も皮脂開口部も破壊せずに行う限り、医師でなくても光脱毛ができる」というもので、自身の開発したPナインという脱毛機ならそれが可能だというものだ。
高橋代表の主張に私が以前より疑問を感じていたのは、「毛乳頭も皮脂開口部も・・・」と言う部分だ。
厚労省の通達は「毛乳頭、皮脂腺開口部を・・・」となっている。
要は「毛乳頭、皮脂腺開口部などを含む皮膚組織を・・・」ということであり、破壊してはならない部位を毛乳頭、皮脂腺開口部に限定したわけではないというのが通常の解釈だろう。
毛乳頭、皮脂腺開口部さえ破壊しなければエステで光脱毛を行ってもOKというのは、あまりに解釈が偏狭すぎて通達の主旨を汲み取っていないように思うのだ。
ただ、高橋代表の理論にエステ業界の一部が飛びついたのには、それなりの背景があった。

経済産業省の報告書、そしてメラス事件。

2002年に初めてエステ脱毛・医師法違反事件の有罪判決が出た。
東京港区のメラス事件である。
この時に光脱毛からの撤退を決断したエステサロンのオーナーさんもいる。
しかしこの時点で既に高価な機械を購入していたエステの大部分は、償却も終えていない機械を何台も抱え、何とか脱毛を続けていく道を模索していた。
撤退に踏み切れなかった理由はそれだけではない。
この事件が起った8月より前の4月に経済産業省より「エステティック事業における適正な施術の在り方について -美容レーザー脱毛とケミカルピーリングの適正な施術の在り方について-」という検討会の報告書が経済産業省サービス産業課により出されたのだ。

その中には「エステティックサロンにおける適正な施術の領域」という項目があり、エステでの光脱毛に要望を付ける形となっていて、エステの光脱毛を条件付で肯定するかのような内容になっている。
よく言われる管轄する省庁の違いによる縦割り行政の弊害なのだが、その是非はさておいて、厚労省のスタンスとの違いは明白である。
この報告書の存在が、エステ業界としての脱毛業務の自主規制や機械の基準作りをしっかりやれば、エステの光脱毛が行政にも認められるかもしれないという空気がエステ業界に流れ、ほとんどのサロンは様子見をしながら営業を続けるというスタンスをとった。

東京都から出たエステサロンにおける光脱毛の安全基準等の報告書。

その後も数は少ないが、顧客に火傷を負わせたエステが医師法違反で逮捕される事件は起きた。
しかし2004年8月、今度は東京都の生活文化局から
『東京都商品等の安全問題に関する協議会を東京都生活文化局が開催』
「エステティックサロンにおけるレーザー等を利用した脱毛機の安全性について」
という報告書が出され、その中にレーザー脱毛機等の安全確保のためのガイドラインが記載されたのだ。
その内容は細部にわたり、かつ具体的なもので、 機器の安全性の確保ややメンテナンスの仕方にまで及んだ。
その中に、( 皮膚の熱傷発生を防止するため、レーザー脱毛機等本体に施術部分を冷却する機能を設けること、または、それに代わる施術上の対応措置を取ること)という項目があり、これが高橋代表が冷却装置の付いているPナインでの施術は医師法違反にはあたらないという理論の背景にもなっている。
この報告書を受けたエステ業界では、機械の安全基準の作成、施術者の技術指導や講習を開く団体などが出てきた。
今はDrタカハシのHPなどは全部削除されているので、Pナインの販売開始時期が確認が出来ないのだが、この後に「東京都の安全基準を満たす医師法違反にあたない唯一の脱毛マシン」としてPナインが販売を始めた。

高橋代表の提唱したビジネスモデルとは

Pナインを販売する前、まだエステを出店していない頃から、高橋医師は「一定の条件の下で施術をする限り、その結果は誰がやっても大差はなく、光脱毛を施術するには医師である必要はない。もし、その法律を厳密に適用するなら施術は医師以外、看護師でもやってはならないはずだ」という理論を展開していた。
私の知る限り高橋医師は、日本での脱毛における治療経験や実績、レーザー脱毛機の使用歴・知識やフラッシュ脱毛機に関する知識はやはり群を抜いていたし、日本一と言ってよいと思う。
その高橋医師のエステ業界に向けられたエールは、医師法違反に怯えるエステにとって心強いものに聞こえた。

その高橋医師が初めてエステ業界の人と接点を持ったのは、グリッドスペーサーというフラッシュ脱毛機の照射部分に付けるパーツの販売と勉強会だったと記憶している。
高橋医師は、エステティシャンが十分な知識を持たずに施術した結果、顧客に熱傷を負わせることを危惧しており、その対策としてグリッドスペーサーを考案したとのことだった。(個人的にはグリッドスペーサーはあまり効果がなく、有用ではなかったと思っている)
勉強会の会費もグリッドスペーサーも決して高い金額ではなく、私も当時は「医療の世界にもエステ業界に好意的なドクターがいるんだなあ」という印象だった。
当然ながら医療界ではエステの脱毛を快く思っているドクターは皆無で、競合関係にあることも手伝って、違法行為という判決が出ながらも一向に減らないエステの脱毛を苦々しく思っている医療関係者がほとんである。

その後、高橋医師はPナインを開発、製造販売に乗り出す。
同時期であったと記憶しているが、今まで開設していた医療機関とは違う形態のエステサロン、Drタカハシを展開する。
Pナインに内蔵された冷却装置は強力で、皮膚表面を冷やしながら照射をするために、施術しても絶対に火傷はしないということだった。
高橋代表の提唱する脱毛ビジネスモデルとは、東京都の安全基準を満たす強力な冷却装置を内臓したマシンで永久脱毛するために必要な出力で照射すれば、事実上の継続的役務から解放されるし違法性もない・・・というものだ。
要するに、高い出力で照射すると毛周期がワンサイクルすれば、その後は照射の必要がなくなる。
今までエステでは出来なかった永久保証をして他店との差別化が図れれば、高めの脱毛料金を設定しても十分採算に合うし顧客も満足する、火傷も発生しないのでリスクはない・・・というものだった。
脱毛では有名な高橋医師の展開する理論は説得力があり、その後、高価なPナインを導入するエステも増えていった。

提唱したビジネスモデルが間違っていないことを実践するように、高橋代表はエステ店を次々に出店していく。
少なくとも自社の経営は、そのビジネスモデルが成功したといえるだろう。
今は削除されてしまったが、その治療経験と構築した脱毛理論が余すところなく述べられた関連会社のHPなどもあり、2ちゃんねるには専用のスレッドが立つくらいなので、集客もあまり苦労しなかったのではないかと推察される。
最終的には20店舗ほど展開したところで今回の事件が起き、今(2012年9月)は全店閉鎖・事後処理の手続きが進んでいる最中である。

一番の被害者はDrタカハシの顧客

今回の医師法事件で被害届を出した被害者の方は除き、一番迷惑を蒙ったのはやはりDrタカハシの顧客の人たちだろう。
現在、契約書に基づいて返金処理がなされているようだが、継続的役務が打ち切られたことで、契約者の方達は納得しないと言うより落胆していると言った方が適切なのかもしれない。
脱毛処理が終了するには、最低でも一部位6回程度はかかる。
ヒゲの脱毛ならなおさらだ。
個人差もある。
その点が不安なために、永久保証をしているDrタカハシを選んだという顧客は多いはずだ。
ヒゲ脱毛を例に取ると、105,000円に対して1回21,000円の計算で返金がされるようだ。
5回以上の人は返金はないらしい。
顧客の人で5回の施術で満足のいく状態になった人が何人いるのだろう。

かなり前だが、渋谷高橋医院などクリニックしかやっていない頃に高橋医師にお会いした時、先生は「ヒゲの脱毛がこんなに回数がかかるとは思わなかった。ヒゲの脱毛に関しては今の料金体系では採算が合わない」と仰っていた。
その言葉を裏付けるかのように、その後料金の改定がされたように記憶している。
エステを展開してからも、ヒゲに関しての料金はかなり安く、今回の閉鎖を残念に思っている人は相当数いると思う。
今回は返金されるようだが、支払い済みの役務の未消化を抱えた消費者が大量に出ると、その被害は相当なものとなる。
エステを管轄する省庁の産経省が危惧するのも正にこの点で、エステの光脱毛を一斉に中止するような措置が取れない原因の一つでもあるのだ。

また、Drタカハシの再開を望む人達も少なからずいるようだが、残念ながらその可能性は限りなくゼロに近いと思う。
裁判の結果が出る前に結論を出すのは時期尚早だとは思うが、容疑者である高橋代表と貴志医師が容疑を認めている以上、有罪判決が出るのはほぼ間違いない。
量刑は分からないが、おそらくは何年かの執行猶予が付くと推察される。
その執行猶予期間中に同罪で逮捕されれば、今度は実刑が待っている。
ダミーを立てて別会社で・・・と想像する人もいるようだが、高橋代表がそんな選択をするわけがない。
何らかの処分がされても、今後も医師として活動することは可能なのだから。

医療機器を違法に販売したとして薬事法違反でも起訴

また、高橋代表はPナインを製造・販売したことで薬事法違反でも追起訴され、報道によるとそれを認めているという。
2008年6月にアップされたYou TubeのPナイン動画には、「日本と韓国を中心に1000台ほど稼働しており、東南アジアでの利用も多いということです。」という説明がある。
この台数が本当であれば、かなりの規模となり、量刑もそれなりに重くなる可能性もあり、検察の求刑が注目される。

この事件については展開が急すぎて満足に情報収集できていないのだが、Pナインを稼動させていたサロンさんの対処も気にかかる。
通常はそのマシンが医療機器と認定されればエステでは使用出来ない。
以前あった薬事法違反の対象となったコスモライトがそうだった。
今回も恐らく例外はないと思われる。
Pナインを使って永久保証をしていたサロンさんがどう対応していくのか、頭の痛いところだろう。

今回の事件は回避出来なかったのか

私がいつも思うのは、何故このような事件がおこってしまうのかということだ。
今までの脱毛エステの医師法違反の報道を見る限り、被害者は例外なく火傷をおっている。
その被害が出た時に顧客である被害者は、まずエステに対応を求めているのだ。
そのまま警察に直行している例はない。

今回のドクタカ事件でも、10回目の施術で炎症の残る火傷が起きたというし、その後もケアで何回か店を訪れたらしい。
その後、他の医療機関を受診したが、その翌日にもDrタカハシ梅田店にケアのため来店したという。
その翌月に診断書をとって被害届の提出という経緯をたどる。

Drタカハシには少なくとも2人の医師がいる。
場所が大阪ですぐに対応出来なかったとしても、医師のネットワークで他の医院への診察の依頼は容易であったはずだ。
何故、その様な対応をしなかったのか。
話がこじれる様ならドクタカ側の医師が直接会って、診察・治療をすることも可能な環境だ。
脱毛行為が医師法違反であるかどうかは別にして、顧客に火傷をおわせたら、誠心誠意謝罪するのが常識だ。
これはエステに限らず、美容院でも他のサービス業でも同じことで、責任者が謝罪し、非を認め、返金や治療費の負担などの補償をするのは当然のことなのだ。
そういう社会通念上当たり前のことがキチンとされていたのか、私には知るすべもないが疑問は残る。

よほどこじれない限り、警察へ被害届を出すようなことにはならないというのが、私の解釈だ。
このケースでも火傷が起きた後、被害者は何回も来店をしてぃる。
その時に上記のようなスタンスで被害者と話し合えば、今回の最悪の事態は回避できたのではないか。
被害者が火傷をおった時点で店に報復する気なら、他の医院で診断書をとってそのまま警察へ直行となるはずだ。
被害者も最初は話し合いよる解決を望んでいたのではないか、という思いがあり、この結果が残念でならない。
それとも私の知りえない何か特殊な事情があったのだろうか。
(上記の内容は報道などを見ての私の推察なので、そこは理解していただきたい。)

現時点(2012年9月)におけるドクタカ事件に学ぶべきこと

もし、この一連の経緯が渋谷高橋医院で起こっていたら、事件にはならなかった。
Drタカハシで起こったとしても、施術したのが医師だったらやはり事件にはなっていない。
エステでスタッフが施術したから事件になったのだ。
この簡単な現実を高橋代表に指摘できる人が、高橋代表の回りにはいなかったのだろうか。
前述したように厚労省の105号通知の解釈にはあまりに無理があった。
高橋代表が脱毛における第一人者であったのは間違いないと思うのだが、法律の専門家ではない。
この105号通知の解釈とPナインの違法性の有無について、法律の専門家の判断を仰いでいたのだろうか。
本来ならPナインの製造に入る前に、違法性については徹底的にリサーチをするべきだった。
もし、それを怠っていたとしたら、そのツケが今頃回って来たのかもしれない。

Pナインは本当に優秀な脱毛機だ。
脱毛マシンを扱う業者ならみんな知っている。
Pナインを造り上げた労力や知識は並大抵のものではないと思う。
高橋代表の経験と熱意が形になった機械かもしれない。
特に評価したいのは内蔵された冷却装置。
冷却装置に関しては右に出る物はない。
冷却機能内蔵をうたった機械は他にも多数あるが、Pナインとはレベルが違う。
多分、今回の判決が出れば、Pナインはエステでは使用不可となる可能性が高い。
本当に残念だと思う。

私の知る限りの脱毛エステの中で、安全性、脱毛効果、価格、が評価すべきレベルにあり、しかもバランスか取れていたという点では、やはりDrタカハシがNO1だった。
しかし、このような経営は自社で機械を製造・販売するからこそ可能になる。
他のエステでは真似出来ない。
高橋代表が医師であったということも、大きく作用していたように思う。

このような結末で,、構築してきた脱毛機械や、それに関わるものが無くなってしまうのは高橋代表の本意ではないはずで、もしかすると被害者への対応はご自身が一番後悔しているのかもしれない。
近年の脱毛エステの料金の低下は明らかにいき過ぎで、終わりのない価格競争には業界全体が疲弊してきている。
その中で、一定の料金体系のもと、永久保証という新しいモデルで存在感をしめしていたDrタカハシの閉鎖は、エステ業界に身をおく者として本当に残念でならない。

2013年5月 補足

情報によると、医師法違反事件の裁判が進まないらしい。
どうも検察が厚労省に照会した回答文書が提出できずにいるようだ。
今までのエステによる医師法違反事件はあっという間に判決がでていたので、やはり何かあるのだろうか。
裁判が空転したために、脱毛機に関わる薬事法事件の審理が進められているようだ。
確か以前の報道では、タカハシの関係者は容疑を認めたはずだ。
それが何でこんなに時間がかかるのだろう。
東京なら傍聴に行くところだが、大阪なので情報も入りにくい。
今後も推移には注視していたい。

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